今回紹介する本は、2011年に発売され話題になり、ドラマ化までされた大ヒット作『限界集落株式会社』です。

起業のためにIT起業を辞職した多岐川優が、人生の休息で訪れた故郷は、限界集落と言われる過疎・高齢化のため社会的な共同生活の維持が困難な土地だった。優は、村の人たちと交流するうちに、集落の農業経営を担うことになった。過疎・高齢化・雇用問題・食料自給率、日本に山積する社会不安を一掃する逆転満塁ホームランの地域活性エンタテインメント。

(引用:文庫版 『限界集落株式会社』小学館)

なぜ農業情報を扱っている当サイトで紹介するかというと、この本を一読するだけでかなりの農業の知識を身につけることができるからです。農業の専門用語はもちろんのこと、現在の農業を取り巻く問題までを楽しみながら学ぶことができます。

今回はそんな素晴らしい本を、農業の視点から見ていきたいと思います。

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限界集落という舞台

主人公である優はサラリーマンとして都会で過ごしていましたが、ある日仕事を辞めて故郷である「止村」に訪れます。

この「止村」というのがこの小説の舞台であり、題名にもある通り限界集落です。

限界集落とは「過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者となり、社会的共同生活の維持が困難になっている集落のこと」を指し、この限界集落は中山間地域に多く存在しています。

そして「止村」における主要産業は農業であり、この物語は主人公優が農業で限界集落の「止村」を活性化させるというものです。

限界集落・中山間地域と農業は非常に重要な関係であるため、この物語を読み終えた頃にはこれらの関係が整理されて知識となるはずです。

※中山間地域と農業の関係を解説した記事はこちら

農協批判

この物語では、しばしば農協(JA)を敵対する組織として批判的な目で見ます。

・農協に依存すれば、安定はするが、農作物の取引価格は全般的に低い
・時勢に乗り遅れているため、農協が供給する肥料や農薬の値段は、今や民間企業よりも割高となっている
・「農協頼りだけじゃ、これ以上前進できない」 (一部抜粋)

このように、脱農協の立場をとり、独自の販売ルートによって現状を打破しようとします。

これは現在の日本の農業の大きな問題の一つです。もちろん、農協は農家にとって欠かせない存在であることも確かです。農家は生産能力はあれど、マーケット感覚に劣る場合が多いので代わりに農協が負担しているという側面もあります。

しかし、優が言うように、これからも農協頼りだけじゃ前進はできません。農業の発展も難しいかと思います。

農協と農業の関係も、考えさせられる作品です。

※農協について解説した記事はこちら

農業を活用したビジネス

農業ビジネスとは、農作物を生産して販売するだけではありません。特に最近では、農業を活用した新たなビジネスも台頭し始めています。

この物語でも面白いビジネスが多数登場します。物語序盤では、例えば、面積の割に利益が少ないコメの生産を利益率が高い野菜に変更したり、販売ルートを地域外に拡大したりと、「止村」の生産と販売を主に改革していきます。

しかし、物語後半では「止村」がビジネスが軌道に乗り始めると、新たな農業ビジネスに参入し始めます。

まず、農作物に付加価値を付けるために、減農薬農業・有機農業に手を出し始めます。

さらに、イチゴの収穫を体験できる「観光農園」を始めたり、採れた野菜をその場で観光客に食べてもらうために「農家レストラン」を始めたりと、観光客の誘致に向けた農業ビジネスを展開します。

これはまさに、地方創生政策が活発な現代では、模倣されるべき地方創生事業であると思います。

農業には経営者(頭脳役)がいない

優の言葉でこういうものがあります。

「じゃあお前がここで新鮮な野菜を作る。それをおれが売る。うまく売って稼ぐ方法を考えてやる。」

「これからの農家は、近代化しないと生き残れません。その為に必要なのは、経営ノウハウと資本力なんです。」

この言葉は、まさに日本の農業問題の根本を突くものです。読んでいて、全く同じ見解を優が持っていて驚いたのを覚えています。

どういうことかというと、現在の農業には優秀な【生産者】はいても、優秀な【経営者】が圧倒的に不足しているんです。胴体はあるのに、脳が無いといった状況です。

「止村」も例外なく、この状態でした。質の高い野菜は作れていたのに、販売や機材購入は全て農協任せ。そこに『経営者』である優が来たことで、「止村」は大きく変わることが出来ました。

これからの農業は生産するだけでは生き残れません。優秀な経営ノウハウを持った人材が、絶対に必要とされます。

優のような人が増えれば、日本の農業の活性化もより現実的なものになるはずです。

農業をより身近なものに

僕は、知識を付けようと思ったらまずそれに関係する小説を読むようにしています。そうすることで、楽しみながら基礎知識を付けることができるからです。

なので、農業に少しでも興味がある方はぜひ『限界集落株式会社』を読んでみてください。

農業の面白さ、農業の現実、そして農業の可能性を感じられるはずですよ。

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